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ゴクリの群れ?

少し前から、ホビットの冒険の原著を読み進めています。やはり束教授の英語はリズムがよくて読みやすく、しかも美しい。そして、ついでと言っては何ですが、日本語版で以前から気になっていた箇所があったので確認してみました。

以下、ホビットの冒険のいわゆる「瀬田訳」について私が疑問に思った箇所についてです。その部分の誤訳の可能性を指摘する内容になっていますが、瀬田貞二氏を非難あるいはおとしめる意図はないこと、念のためお断りしておきます。そもそも私も瀬田訳ファンです。いとしいやく!

ホビットの冒険の第五章「くらやみでなぞなぞ問答」に、以下のような記述があります。

『(ゴクリは指輪をお祝いにもらったと言っているが)そんなことは、わかったものではありません。その昔のゴクリのむれをとりしまっていたゴクリの頭でも、知らないにちがいありません。』(岩波少年文庫版 上巻164ページ)

私はホビットを指輪の後で読んだので、「ゴクリのむれ」という部分に非常に違和感がありました。しかしホビットが指輪の前に書かれ、本来は中つ国の物語の一部ではなかったとは聞き知っていたので、束教授の修正前の構想なのかな、と思っていました。ですが、他の部分は指輪とおおむね整合性が取れています。

そして今回、該当部分の原文を読んでみると、こうなっていました。

『But who knows how Gollum came by that present, ages ago in the old days when such rings were still at large in the world? Perhaps even the Master who ruled them could not have said.』(Houghton Mifflin Company版 75ページ)

大前提として、束教授はホビットの冒険に何度も改定を加えており、瀬田訳ホビットの底本になっている版と私の手持ちの版は違います。なので、上記箇所も瀬田訳の原文とは異なる可能性があります。そのことは念頭に置いておくとして。

この文脈だと、"the Master"とは"rings (of power)"の支配者/所有者にならないでしょうか。ゴクリ初登場時からざっと見てみましたが、ゴクリをある特定の種類の生物の一個体とする記述はなく、"them"と複数形で指し示す部分(例えばgollumsのような)は見当たりません。確証があるわけではないですが(そもそも私に言語の専門的素養は一切ありません)、この解釈なら違和感(というより指輪物語とのズレ)はぬぐえるように思えます。

できれば山本史郎氏の訳や瀬田訳の底本とも照らし合わせてみたいのですが、いずれも手元にないので今は無理。山本訳版は資料としてはかなりいいものと聞いたので、今度日本に戻った時に買うつもり。軽くぐぐった限りでは、この箇所について扱った日本語のサイトなどは見当たらなかったので、何がしかご存知の方は教えていただけると嬉しいです。
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comment

No title

山本史郎役『ホビット ゆきてかえりし物語』の(恐らく)同じ部分は、以下のように訳されています。

ゴクリはいつも自分にむかってこのように言いましたが、そのような魔法の指輪がまだいくつも世の中に出まわっていた古い古い昔のこと、ゴクリがどうやってそれを手にいれたのか、さあ、知れたものではありません。指輪の王にさえ分からなかったでしょう。

この訳は第4版(最終版)をもとに訳されていますが、瀬田訳は第2版を元に訳されています。第2版の英文がどうなっているのかは確認できませんでした。

文献調査たのすぃ

えーと、75ページ…HarperCollinsの1999年のペーパーバック版では77ページでしたw

グーグル先生に聞いてみた所まさにそのことを語っていたスレを教えてくれました。
Did JRR write "Hobbit" with LOTR in mind?
http://forums.theonering.com/viewtopic.php?t=76204&view=previous
ガイジンさんたちは普通にサウロンのことだと受け取ってるみたいですね。
そりゃ「Master」なんて大文字開始で固有名詞的に書かれたら字面通りそう受け取るのが自然でしょうな。
さかなPの考え("the Master"とは"rings (of power)"の支配者/所有者)は正しそうです。

そしてなんと指輪物語が書かれる前のホビットの初版ではこの節はこうではなかったそうですね。
というわけで初版と改訂版(第二版なのか第三版なのか第四版なのかは不明)の比較ページを発見。
http://www.ringgame.net/riddles.html
なんと初版は該当箇所がやたら短い上に全然違う。
瀬田先生が底本にしたのは第二版でしたっけね。
第二版と現行第四版でこの部分は変わっていないものと仮定して言うと、ホビット翻訳に携わっていた当時はまだ指輪を読んでいなかったために指輪の主サウロンという存在を知らずに一般名詞としてそう(主をゴクリの群れの頭と)訳してしまったものと推測できませんでしょうか。
まあ束先生が指輪出したのが1954年で、瀬田先生がホビット邦訳出したのが1965年なので、瀬田先生も指輪を読み込んでからホビットの翻訳を行うこともできたのでしょうけども、まあ今更言ってもちかたないですね。

とはいえ上のはあくまで予断なのでいずれにせよ山本訳や原書第二版を当たってみるのは正しそうです。
山本訳は地元の図書館にあるので時間が取れたら行ってみようかなぁ、と思って昨日ここまで書いてw一夜明けると山本訳所有者殿がきてれぅ!
見ると山本先生は正しく訳されておられるようですな。
あとは原書ですなーこれは日本でよりもアメリカでの方が探しやすそうな。

No title

まあ『ホビットの冒険』だけを読むと、ゴクリというのは個体の名前ではなく種族の名前であるという解釈もできてしまいますから「ゴクリの群れ」という言葉が出てきたのではないでしょうか。

No title

皆さま、早速の情報ありがとうございました。こうして見る限りでは、
・少なくとも第四版ではthe Masterは指輪の主と考えるのが妥当
・ただし、瀬田氏はホビットを訳した時点では指輪物語はおそらく未読
・瀬田訳の底本である第二版がどうなっているかは不明

といった解釈でよさそうですね。これで、ホビット初読以来のもやもやがすっきりしました、本当に感謝です。

あとは原著第二版をあたってみたいのですが、ちょっと単独での入手は難しそうなので、ホビットの変遷が乗っているというAnnotated Hobbitを注文しました(山本訳の底本はこれの初版で、注文したのは第二版です)。せっかくですから、これが届いたらコメントでいただいた情報などと合わせて新しくエントリを立てようと思います(個別に返信せず申し訳ありません)。

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